鯖街道ウルトラマラソン その6 ちょっといい話

百里小屋エイドから山本酒店エイドまでは9km。
この間、同じような風景が続き、しかもロードオンリーで、選手にはかなりきつい区間です。

そこに突然現れた小さなエイド。
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みなさん、このエイド覚えていますよね?
かわいい女の子が二人いたでしょう?
残念ながら写真を撮る直前に、妹ちゃんはその場をちょっと離れたので写っていませんが。

そう、それは私設のエイド。

3年前、管理人Bがはじめてスイーパーをしたときのことです。
雨の中、道路から少し奥まった家の玄関の軒下に、小さなテーブルを置いて、そのうしろに二人はちょこんと座っていました。
テーブルの上には紙コップと飴の乗ったお皿。
ひょっとしてと思い、近づいて声を掛けてみました。
「自分たちでエイドをしてくれてるの?」
「うん」
とにっこり。

最初の選手が通り過ぎてから、最後の選手が来るまで、雨の中を2時間以上、二人でエイドをしていたのです。
寒かったので、二人は厚着をしていました。
きっと立ち寄る人は少なかったことでしょう。
それでもにこにこと笑いながら、話をしてくれたのが印象的でした。

去年も雨の中、女の子二人は、同じ軒下でエイドをしてくれていました。
そこへ駆け寄り、飴をもらい、
「毎年ありがとう!」
と言って、最後の選手とともに手を振りながら走り去ったことを思い出します。

そして今年…
少し大きくなった二人は、今度は家の前の川沿いの杉の木の下でエイドをしてくれていました。

テーブルのわきには使い切った大量の紙コップ。
「ものすごい人数で、紙コップが足らなくなっちゃった。」
と女の子。
そして袋の中からアンパンを取り出し
「これどうぞ!」
と。
「えっ、アンパンもあるの?」

どれだけの数の紙コップとアンパンを用意してくれたんだろう?
たくさんの選手がここに立ち寄ったんだろうな。
選手たちはこのエイドでどんなことを感じたんだろう?
前の選手が通ってから長い時間経っているのに、まだ待っていてくれたんだ!
と、いろいろな思いが頭の中を駆け巡りました。

しばらく会話をした後、お礼を言って、アンパンの甘さを噛みしめながら、前述のトライアスリートさんと一緒に歩き出しました。
100mほど行ったところで、言い忘れたことがあることにハッと気づき、あわてて引き返して、
「おっちゃんが一番最後やで。もう誰も来ないから片付けてな。ありがとう!」
と声をかけると、
「ありがとうございます。」
と満面の笑み…

「この子たち、毎年自分たちでメニューを考えて、楽しみながらしているんですよ。」
とそこへ現れたお母さん。

前日に、あれやこれやと二人でせっせと準備をしている姿が目に浮かびました。
その健気さと純粋な気持ちにただただ頭が下がります。
と同時に、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。

二人が出会うたくさんの人々や一つひとつの経験が、二人が成長するための糧だとしたら、鯖街道ウルトラマラソンは、それを生み出す言わば土壌のようなものです。
この土壌を肥沃なものにしていくことこそ、我々大人に求められていることなのかもしれません。
二人の健やかな成長を願うばかりです。

ところで、上記の写真の説明を。

エイドを見つけた直後、トライアスリートさんに、このエイドは女の子二人による私設のエイドであることを告げました。
すると、カメラを構えた私より少し先に歩み寄り、女の子に話しかけました。

しゃがんでいるのは足が痛いから?
いえいえ、この方、痛いのは足ではなく胃です。

ではなぜ?

それは…
あえて女の子の目線より低い場所から話しかけようとしたから…
と私の眼には映りました。

忘れられないのは、疲れた体に活力を与えてくれたアンパンの甘さだけでなく、心が満たされ熱くなる、そんな1コマを演出してくれた、小さな小さなエイドでもあったのです。

つづく…

(大会へのご意見、ご感想、感動体験などがありましたらこちらまで)

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